薬理学の代表的な教科書。多くの医学生、薬学部生に愛用されている。薬理学に精通する専門家50人が分担して執筆しており、内容は正確かつ網羅的で完成度の高いものになっている。単なる暗記にならないように、薬物の作用機序を重点的に取り上げているため段階を追って記憶することができる。暗記よりも理解に重点を置いた教科書であると言える。また、その作用機序もうまく図や表にまとめられているため、視覚的にも把握しやすい。第一章二章の総論での、薬の作用機序、動態、受容体と情報伝達に関する精密な解説は、より正確に理解を深める事ができる。これ一冊を読めば、臨床で使用されている主要医薬品を一通り網羅できる。
NEW薬理学を語るときは、いつも各論の充実具合が挙げられる反面、総論部分の分かりにくさにも言及される。確かに総論部分の内容は役に立つものであるが、生化学や生理学の基礎知識がないと理解しづらい内容になっており、初学者には不向きである。また、作用機序は分かりやすいのだが、個々の薬物の解説になるとポイントが絞れていないような表記が見受けられる。
試験対策用としては重いため、もう少し軽めの教科書を一冊用意し、NEW薬理学は辞書的な使い方をすることが望ましい。
・生体内情報伝達・イオンシグナル・生理活性物質について取り上げた2〜4章は出色の出来であると言える。
・各論は初学者でも無理なく学習できる。
・作用機序は他の教科書にないぐらい丁寧に解説してある。
・前半に生理学的な話で受容体やホルモン、伝達物質の役割を解説している。後半は各論で、個々の薬の解説を行っている。前半の総論がすんなり分かればかなり使える教科書になる。
・臨床に使用される主要医薬品もすべてカバーされている。
・イラストは少なめである。
・日本語が分かりづらい。
・分布容積(Vd)という言葉が定義なしでいきなり本文に登場する。こんなテクニカルタームを知っているのは薬物動態学をすでに修めた人だけだ。初学者向きではない。
書名 | 著者 | ページ数 | 出版社 | 発売日 | 価格 | Amazon |
NEW薬理学 | 田中千賀子、加藤隆一 | 650 | 南江堂 | 2011/04 | 9,240円 | ○ |